【2025年最新版】中国越境ECの法律・規制を徹底解説!参入前に押さえるべき必須知識と対策
中国の巨大なEC市場は、日本の事業者にとって大きな魅力ですが、その一方で複雑な法律や規制が参入のハードルとなっています。知らずに進出してしまうと、思わぬトラブルに見舞われる可能性も少なくありません。
本記事では、中国向け越境ECを検討している、あるいは既に展開している事業者の皆様が押さえておくべき主要な法律・規制、注意点、そして具体的な対策について、最新情報を交えながら分かりやすく解説します。この記事を読めば、中国越境ECの法的リスクを理解し、適切な準備を進めるための一歩を踏み出せるはずです。
中国越境ECに関わる主要な法律・規制の全体像
中国の越境ECビジネスを展開する上で、特に理解しておくべき法律や規制は多岐にわたります。これらは、中国国内の消費者を保護し、公正な市場競争を促進することを目的としています。
1. 中国電子商取引法(电商法)
2019年1月1日に施行された「中華人民共和国電子商取引法」は、越境ECを含むすべての電子商取引活動の基本的なルールを定めています。主なポイントは以下の通りです。
- EC事業者の明確化と登録義務: 個人を含むEC事業者は市場主体としての登録が原則として必要です。プラットフォーム内事業者も含まれます。
- 納税義務の明確化: EC事業者には法に基づく納税義務があることが明記されました。
- 消費者権利保護の強化: 商品・サービス情報の真実性・正確性の保証、レビュー操作の禁止、抱き合わせ販売の制限、デポジット返還ルールの明確化などが盛り込まれています。
- プラットフォーム運営者の責任強化: 知的財産権侵害があった場合の通知・削除義務や、消費者保護のための体制整備などが求められます。
この法律の施行により、越境EC事業者にも中国国内事業者と同様の法的責任が求められる場面が増えています。
2. 越境EC小売輸入制度と関連政策
中国政府は、一定の条件を満たす越境ECによる小売輸入品に対して、通関手続きの簡素化や税制優遇措置を設けています。これが「越境EC小売輸入」制度です。
- ポジティブリスト管理: 越境EC小売輸入の対象となる商品は「越境EC小売輸入商品リスト(通称:ポジティブリスト)」によって定められています。リストに掲載されていない商品は、この制度を利用できません。
- 限度額設定: 個人が1回に購入できる金額の上限(現在は5,000元)と、年間に購入できる金額の上限(現在は26,000元)が設定されています。
- 税制優遇: 限度額内の取引であれば、関税が免除され、輸入環節増値税と消費税が70%に減額されます。
- トレーサビリティの要求: 商品の品質安全確保のため、商品の生産、物流、販売の各段階における情報追跡(トレーサビリティ)体制の構築が求められる場合があります。
これらの政策は頻繁に更新される可能性があるため、常に最新情報を確認することが重要です。
3. 知的財産権関連法規
中国では、商標権、特許権、著作権などの知的財産権保護が強化される傾向にありますが、模倣品や権利侵害のリスクは依然として高いのが現状です。
- 商標の早期登録: 中国では先願主義(先に申請した者勝ち)が採用されているため、中国市場への進出を検討する段階で、自社ブランドの商標を中国で登録しておくことが極めて重要です。
- プラットフォームにおける権利侵害対応: 大手ECプラットフォームは、知的財産権侵害の申告窓口を設け、権利者からの通知に基づいて侵害品の削除などの措置を講じる体制を整備しています。
- 税関における水際措置: 中国税関では、知的財産権を侵害する物品の輸出入を差し止める制度があります。事前に税関に自社の権利を登録しておくことで、より効果的な取り締まりが期待できます。
4. 個人情報保護法(PIPL)
2021年11月1日に施行された「中華人民共和国個人情報保護法(PIPL)」は、中国国内の個人情報保護に関する包括的な法律です。越境ECで中国人消費者の個人情報を取り扱う場合、この法律の対象となります。
- 個人情報の取得・処理に関する厳格なルール: 本人の同意取得、利用目的の明確化、必要最小限の収集などが求められます。
- 個人情報の越境移転に関する規制: 中国国内で収集・生成された重要な個人情報を中国国外に移転する際には、政府の安全評価、個人情報保護認証、標準契約の締結などのいずれかの措置を講じる必要があります。
越境EC事業者は、顧客データの取り扱いに関して、PIPLの規定を遵守するための体制構築が不可欠です。
越境ECで遵守すべき重要ポイントとトラブル回避策
上記の法律・規制を踏まえ、中国越境ECで特に注意すべきポイントと、トラブルを未然に防ぐための対策を解説します。
1. 販売禁止・制限品目の確認と通関手続き
中国には、輸入が禁止されている品目(例:特定の動植物製品、中古品の一部など)や、輸入に際して特別な許可・証明が必要となる品目(例:化粧品、食品、乳幼児製品など)があります。これらは「ネガティブリスト」や関連法規で定められています。
- 対策:
- 必ず事前に、取り扱い予定の商品がポジティブリストに含まれているか、ネガティブリストに該当しないかを確認する。
- 化粧品や健康食品など、許認可が必要な場合は、その取得手続きや必要書類について専門家(JETRO、コンサルティング会社など)に相談する。
- 通関書類の不備は遅延やペナルティの原因となるため、正確な情報記載と必要書類の準備を徹底する。
2. 広告・表示規制と消費者契約
中国では、広告内容や商品表示に関する規制も厳しくなっています。
- 誇大広告・虚偽広告の禁止: 事実に基づかない効果効能の表示や、消費者を誤認させるような表現は厳しく罰せられます。
- 必要な表示事項: 商品の種類によっては、中国語での成分表示、生産者情報、使用期限などの表示が義務付けられています。
- 返品・交換ポリシー: 中国の消費者権益保護法では、オンラインショッピングにおける「7日間無理由返品」制度が定められています(一部対象外商品あり)。自社の返品・交換ポリシーを明確にし、消費者に分かりやすく提示する必要があります。
- 対策:
- 中国の広告法や消費者権益保護法を理解し、広告表現や商品説明文を作成する。
- 商品ラベルやパッケージの中国語表記について、専門家による確認を行う。
- 明確で公正な利用規約や返品ポリシーを中国語で作成し、ウェブサイトに掲載する。
3. 契約と決済、物流における注意点
現地のパートナー企業(物流会社、決済代行業者、販売代理店など)との契約は慎重に行う必要があります。
- 契約書の重要性: 契約内容は中国語で作成し、双方の権利義務、責任範囲、紛争解決方法などを明確に定めます。可能であれば、日中両言語で作成し、言語間の解釈に齟齬がないように確認します。
- 決済システムの選択: 中国で主流のオンライン決済手段(Alipay、WeChat Payなど)に対応できる体制を整えることが不可欠です。
- 物流体制の構築: 信頼できる物流パートナーを選定し、商品の保管、梱包、配送、通関手続き、そして返品対応までスムーズに行える体制を構築します。保税区を活用したモデルも検討に値します。
- 対策:
- 契約締結前に、必ず中国法務に詳しい弁護士などの専門家によるリーガルチェックを受ける。
- 複数の決済代行業者や物流業者を比較検討し、自社のビジネスモデルや商品特性に最適なパートナーを選ぶ。
- 物流過程での破損や紛失リスクに備え、適切な保険に加入する。
中国越境ECの法的リスクに備えるための心構えと情報収集
中国の法律や規制は改正されることも多く、常に最新情報を把握しておくことが成功の鍵となります。
- 情報収集のチャネル:
- JETRO(日本貿易振興機構): 中国の法規制に関する情報やセミナーを提供しています。
- 中国政府機関のウェブサイト: 税関総署、市場監督管理総局などの公式サイトで最新の通達や公告が発表されます。
- 業界ニュース・専門メディア: 越境ECや中国ビジネスに関する専門ニュースサイトや業界誌を購読する。
- 専門家(弁護士、コンサルタント): 最新の法改正情報や実務上のアドバイスを得るために、信頼できる専門家と連携する。
- 社内体制の整備:
- 法務担当者を置くか、外部専門家と顧問契約を結ぶなどして、法規制への対応体制を構築する。
- 従業員への教育を行い、関連法規の知識を共有する。
- トラブル発生時の備え:
- 万が一、法的トラブルや消費者との紛争が発生した場合に備え、相談できる専門家や窓口を事前に確保しておく。
- ECプラットフォームが提供する紛争解決メカニズムについても理解しておく。
中国越境ECは大きな可能性を秘めていますが、その裏には複雑な法的リスクも存在します。しかし、これらのリスクを正しく理解し、適切な準備と対策を講じることで、安全かつ持続的なビジネス展開が可能になります。本記事が、皆様の中国越境ECビジネス成功の一助となれば幸いです。